| 民法総則 /意思表示(総合)/解答解説 【問 1】 解答解説 1 正しい。 [制限行為能力者と意思能力] 成年被後見人Aは,たとえ 「契約の際完全な意思能力を有していても」,AB間の契約を取り消し,第三者Cに対して所有権を主張できる。 制限行為能力者制度は,日常的に判断能力が不十分な者を保護するために,個々の契約をする際の意思能力の有無・程度をいちいち問題とせずに,単に制限行為能力者であるというだけで契約の取消権を与え,契約の拘束から解放するようにしたのである。 この保護は絶対的であって, 〈善意・無過失〉 の第三者に移転登記がされていても,取消しの効果を主張できる。 2 誤り。 [取消権の消滅時効──未成年者の場合] 制限行為能力を理由とする取消権も永久に存続するわけではない。 取消権は,@追認できる時から5年間行使しないとき,または,A行為 (契約) の時から20年間を経過したときは,時効消滅する。 未成年者は,成年に達した時から追認できるから,取消権は,この時から5年間行使しないことによって消滅する。 「成年に達すれば」 というだけで,「契約を取り消すことができなくなる」 わけではない。 3 正しい。 [錯誤と善意の第三者] 表意者Aは,重大な過失がないときは,要素の錯誤を理由にAB間の契約の無効を主張し,Cに対して所有権を主張できる。 錯誤による無効は,善意・無過失の第三者にも主張できるのである。 4 正しい。 [虚偽表示と善意の第三者] Aが 「Bと通謀」 した売買契約は虚偽表示であるから,Aは契約の無効を主張できるが,この無効は,善意の第三者Cに対しては主張できない。 [正解] 2 【問 2】 解答解説 本問は,典型的な詐欺の問題であるが,錯誤,不法行為の問題も含んでいる。 1 誤り。 [公序良俗違反] 時価20万円の原野を2,000万円で売却する行為は,他人に著しい損害を与える 〈暴利行為〉 であり,自由競争の行きすぎとして公序良俗に反する。 したがって,買主Aは,契約は公序良俗に反するとして,その無効を主張し,また,売主Bの暴利行為により利益を侵害されたとして,不法行為に基づく損害賠償責任を追及できる。 公序良俗に反する行為は,はじめから 〈無効〉 であって,「取消しを主張する」 必要はない。 2 誤り。 [要素の錯誤と重過失] 法律行為の要素に錯誤があるとして,その無効を主張できるのは,表意者Aに,重大な過失 (重過失) がないときに限る。 つまり,Aは, 〈軽過失〉 があっても無効を主張できるのであって, 「無過失のときに限り」 主張できるのではない。 3 正しい。 [取消権の消滅時効] 詐欺による契約も,締結後20年を経過したときは,もはや取り消すことはできなくなる。取消権は,@追認できる時から5年間行使しないとき,または,A契約締結の時から20年間を経過したときは,時効消滅する。 4 誤り。 [被保佐人の行為能力──不動産の取引行為] 被保佐人が,土地を購入するなど 〈不動産その他重要な財産〉 の取引行為をするには,保佐人の同意 (または同意に代わる家庭裁判所の許可) が必要であり,同意を得ないでした場合は,これを取り消すことができる。「無効を主張することができる」 のではない。 [正解] 3 * 90条(公序良俗) 公の秩序または善良の風俗 (公序良俗) に反する事項を目的とする法律行為は,無効とする。 【問 3】 解答解説 1 正しい。 [第三者の詐欺] 売主Aは,第三者Cの詐欺によって売却の意思表示をしている。この場合,欺されたAは,買主Bが, 「Cによる詐欺の事実を知っていた」 悪意のときに限って,その意思表示を取り消すことができる。 2 誤り。 [強迫と善意の第三者] Aは,Bの強迫を理由に売却の意思表示を取り消すことができるが,この取消しは,善意の第三者Dにも対抗できる。 詐欺の場合は,欺された本人にも落度があるから,本人よりも善意の第三者を保護すべきであるとされ,したがって,善意の第三者には取消しを 〈対抗できない〉 のであるが,強迫の場合は,強迫された本人には何の落度もないから,善意の第三者よりも本人を保護すべきであるとされ,したがって,善意の第三者にも取消しを 〈対抗できる〉 のだ。 3 正しい。 [心裡留保と悪意の相手方] Aが, 「自分の真意ではないと認識しながら」 行った売却の意思表示は心裡留保であって,原則として有効である (つまり,売却の意思表示どおりの効果が生じるから,相手方は保護されることになる)。 ただし,相手方Bが 「Aの真意を知っていた」 のであれば,そのような悪意のBを保護する必要はないから,Aは,もともと真意ではない売却の意思表示の無効を主張できるのである。 4 正しい。 [要素の錯誤と重過失] 法律行為の要素に錯誤があれば,表意者Aは,その意思表示の無効を主張できるが,重大な過失があるときは,その無効を主張できない。 〈あまりに不注意〉 な表意者を保護する必要はないのだ。 [正解] 2 * 93条(心裡留保) 意思表示は,表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても,そのためにその効力を妨げられない (つまり,有効である)。 ただし,相手方が表意者の真意を知り (悪意のとき),または知ることができたとき (過失によって知らないとき) は,その意思表示は,無効とする。 【問 4】 解答解説 1 誤り。 [心裡留保と悪意の相手方] Aの 〈真意ではない〉 売渡し申込みの意思表示は心裡留保であり,原則として有効である (そのまま売却の意思表示となる)。 しかし,相手方Bが,表意者Aの真意を,@知っていたか (悪意のとき),または,A知らなくても普通の注意をすれば知ることができたとき (善意だが過失あるとき) は,例外的に意思表示は無効とされる。 Bは,Aの売るという意思が 「真意ではないことを知っていた」(売らないという真意を知っていた) のであるから,売買契約は無効である。Aの真意は売らないという点にあり,Bもそれを知っていれば,そもそも売買契約を有効とする理由はないのだ。 2 正しい。 [虚偽表示] Aが, 「実際には売り渡す意思はないのにBと通謀して」 締結した売買契約は,虚偽表示によるものであり,無効である。 3 誤り。 [第三者の詐欺] Aが,第三者Cの詐欺によってBと契約を締結した場合,Aは,相手方BがCの詐欺を知っている悪意のときに限って,契約を取り消すことができる。 Aが取り消せるかどうかは, 「Cの詐欺をBが知っているか否か」 にかかわるのである。 4 誤り。 [第三者の強迫] Aが,第三者Cの強迫によってBと契約を締結した場合,Aは,相手方Bが,Cの強迫を知っていても知らなくても (Bの善意・悪意に関係なく),常に契約を取り消すことができる。 強迫されたAに落度はないといえるから,詐欺の場合のような制限はない。 [正解] 2 【問 5】 解答解説 本問は,取消や解除があった場合に,本人と第三者との優劣を問う問題である。 1 誤り。 [詐欺による取消しと善意の第三者] Aが,Bの詐欺を理由に売買契約を取り消しても,その取消しは,善意の第三者Cには対抗できない。 2 誤り。 [未成年者による取消しと善意の第三者] 未成年者Aが,法定代理人の同意がないことを理由に契約を取り消した場合,その取消しは,善意の第三者Cにも対抗できる。 制限行為能力者は 〈絶対的に保護〉 されており,虚偽表示や詐欺の場合のような善意の第三者保護規定は存在しないのである。 3 誤り。 [解除と悪意の第三者] Aが,Bの債務不履行を理由に契約を解除しても,そのことを悪意の第三者Cには対抗できない。 契約の解除は,契約がはじめから存在しなかったと同様の状態にもどすことであるから,解除されれば,解除前にすでに生じている第三者の権利も失われることになる。これでは,完全に権利を取得したはずの第三者が害されるため,民法は,解除によって 『第三者の権利を害することはできない』 として,第三者を保護したのである。 この場合,第三者の善意・悪意は問題とされないが,対抗要件 (登記) を備えていなければならない。 4 正しい。 [強迫による取消しと善意の第三者] Aが,Bの強迫を理由に契約を取り消した場合,その取消しは,善意の第三者Cにも対抗できる。選択肢1の詐欺とは異なることに注意。 [正解] 4 * 545条(解除の効果) @ 当事者の一方がその解除権を行使したときは,各当事者は,その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし,第三者の権利を害することはできない。 【問 6】 解答解説 1 誤り。 [心裡留保] Aの 〈真意ではない〉 意思表示は心裡留保であって,原則として有効である。しかし,相手方Bが,Aの真意を 「知っていた」 悪意のときは,Aの意思表示は無効とされる。 したがって,悪意のBが 「1,000万円で購入する」 という意思表示をしても,AB間の売買契約は無効である。 2 誤り。 [虚偽表示] 「意を通じた仮装」 のAB間の契約は,虚偽表示によるものであって無効である。 「債権者からの差押えを逃れる」 ためにしたという虚偽表示の動機は関係がない。 3 正しい。 [第三者の強迫] Aが, 〈第三者〉 Cの強迫によりBと契約を締結した場合,Aは,相手方Bが 「強迫の事実を知っていたか否かにかかわらず」 (相手方の善意・悪意に関係なく),常にCの強迫を理由に売買契約を取り消すことができる。 4 誤り。 [意思無能力者の行為] 意思無能力の状態で売買契約がなされた場合は,正常な判断能力がないのであるから契約ははじめから無効である。 何の効力も生じていない無効な行為について, 「追認するまではいつでも売買契約を取り消すことができ」 る余地はない。 [正解] 3 |