民法総則 /意思能力・制限行為能力/解答解説 |
| 【問 1】 解答解説 1 誤り。 [意思無能力者の意思表示] 「意思能力を欠いている者」の意思表示は,取り消さなくても,はじめから無効であり,法律上何の効力も生じない。意思能力というのは,行為の結果を判断できる正常な判断能力のことであって,人が意思表示により権利を取得したり義務を負担する(所有者となったり,債権者・債務者となる)のは,その意思表示が正常な判断能力に基づくからである。 意思無能力者の意思表示は,正常な判断能力に基づくとはいえず,その行為を有効とするわけにはいかないのである。 2 誤り。 [未成年者──婚姻による成年擬制] 未成年者が婚姻したときは,これによって成年に達したものとみなされ,以後行為能力者として扱われる。つまり,婚姻した未成年者が自分1人の判断で行った意思表示も有効であり,もはや親権者(法定代理人)の同意がないことを理由に,その意思表示を取り消すことはできない。 3 正しい。 [成年被後見人の行為能力] 成年被後見人の意思表示は,たとえ「成年後見人の事前の同意を得て」いても,常に取り消すことができる。成年被後見人は,日常的に判断能力を欠く状態にあるため,事前に同意を与えて単独で行為をさせること自体,そもそも本人保護の点からいって危険なのである。ただし,日用品の購入など日常生活に関するものについては,例外的に自分1人の判断で(単独で)することができる。 4 誤り。 [被保佐人の行為能力──不動産の取引行為] 被保佐人は,判断能力が著しく不十分であるため,土地を売却するなど不動産その他重要な財産の取引行為をするには,保佐人の同意(または同意に代わる家庭裁判所の許可)が必要であり,同意を得ない行為は,取り消すことができる。 被保佐人が,「保佐人の事前の同意を得て」土地売却の意思表示を行ったのであれば,この意思表示は有効であり,もはや取り消すことはできない。 なお,成年被後見人と同じく,日用品の購入その他日常生活に関する行為は単独でできる。 [正解] 3 * 9条(成年被後見人の法律行為) 成年被後見人の法律行為は,取り消すことができる。 ただし,日用品の購入その他日常生活に関する行為については,この限りでない。 * 753条(婚姻による成年擬制) 未成年者が婚姻をしたときは,これによって成年に達したものとみなす。 【問 2】 解答解説 1 誤り。 [被保佐人の行為能力──不動産の取引行為] 被保佐人が,土地の売買契約を締結するなど,不動産その他重要な財産の取引行為をするには保佐人の同意を得なければならず,「同意を得ずに」した行為は,取り消すことができる。「当初から無効」なのではない。取り消したときに,はじめから無効とみなされるのである。 2 誤り。 [意思無能力者の意思表示] 意思無能力者Cのした契約は,取り消さなくても,はじめから無効である。意思無能力者の意思表示は,正常な判断能力に基づくものとはいえず,その意思表示に法律上の効果を与える(有効とする)ことはできないのである。 3 正しい。 [権利能力なき社団] 権利能力というのは,権利を取得したり,義務を負ったりすることのできる法的な資格をいうから,権利能力を有しない社団は,そもそも権利義務の主体となることができない。そのような社団Dが土地の売買契約を締結しても,土地所有権がDに帰属することはありえない。 結局,権利能力なき社団の不動産については,社団を権利者とする登記をしたり,社団代表者の肩書を付した代表者個人名義の登記をすることは許されず,個人名義で登記するか,構成員全員の共有名義で登記するしかない。 4 誤り。 [未成年者──婚姻による成年擬制] 未成年者の婚姻は,父母の同意を必要とするが,その同意は父母の一方だけで足りる。したがって,未成年者Eの婚姻が「父母の一方の同意を得られないまま」であっても,Eは婚姻によって成年に達したものとみなされ,行為能力者として扱われる。Eは,未成年者であることを理由に契約を取り消すことはできない。 [正解] 3 * 13条(保佐人の同意を要する被保佐人の行為) @ 被保佐人が次に掲げる行為をするには,その保佐人の同意を得なければならない。 ただし,日用品の購入その他日常生活に関する行為については,この限りでない。 一 元本を領収し,または利用すること。 二 借財または保証をすること。 三 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。 四 (以下略) C 保佐人の同意を得ないでしたものは,取り消すことができる。 【問 3】 解答解説 未成年者が法律行為をするには,法定代理人の同意を得なければならず,同意のない法律行為は,取り消すことができる。本問のように,未成年者が,法定代理人の同意を得ないで,自分1人の単独意思で不動産売買契約を締結した場合,原則として,この契約を取り消すことができる。 1 誤り。 [取消しと第三者] 未成年者Aの不動産売買契約は,法定代理人Cの同意を得ていないのであるから,これを取り消すことができるのであって,「無効」なのではない。この取消しは,「Aの制限行為能力を知らなかった」善意の第三者Dに対しても対抗できる。制限行為能力者は,絶対的に保護されているのである。 2 誤り。 [催告に確答しなかった場合] 相手方Bの催告に対して,法定代理人Cが「確答をしなかった」場合,Cは契約を追認したものとみなされる。「取り消したものとみなされる」のではない。 未成年者側が1ヵ月以上の考慮期間が与えられたにもかかわらず,確答を放置した場合には,契約をそのまま存続させることとして相手方を保護したのである。 3 正しい。 [制限行為能力者の詐術――取消権の消滅] 未成年者Aが「自分は成年者である」と偽って相手方Bを欺き,あたかも行為能力者であるかのように詐術を用いた場合,Aは,もはや契約を取り消すことはできず(取消権の消滅),契約は有効なものとして確定する。詐術を用いた制限行為能力者を保護する必要はないのである。 4 誤り。 [取消権の消滅時効] 取消しの意思表示がないまま,未成年者Aが成年に達しても,それだけで契約が,「始めから有効であったものとみなされる」わけではない。 取消権は,@追認できる時から5年間行使しないとき,または,A契約の時から20年間を経過したときに時効消滅するが,未成年者Aが追認できる時は,成年に達した時以後であるから,この時から5年間取り消さないことによって取消権が消滅し,契約ははじめから有効であったものとみなされる。 [正解] 3 * 5条(未成年者の法律行為) @ 未成年者が法律行為をするには,その法定代理人の同意を得なければならない。 ただし,単に権利を得,または義務を免れる法律行為については,この限りでない。 A 前項の規定に反する法律行為は,取り消すことができる。 |